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ミステリ ブログトップ
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鳥飼否宇『死と砂時計』(東京創元社) [ミステリ]

世界各国の死刑囚だけが集められたジャリーミスタン終末監獄。両親を殺害した罪で収監されたアラン・イシダは、監獄の牢名主的存在であるシュルツ老人の助手となり、彼とともにさまざまな怪事件の捜査にかかわることに……
ご覧の通り舞台は監獄なので、被害者も犯人も探偵役もみんな巨大な密室の中にいるようなものです。囚人だったり管理者側だったりしますけれども関係者は限定されています。
監獄を舞台にしたミステリとして、殺人に限らず脱獄などその他の不可解な事件も起きるのが大変よろしかったです。なにぶん特殊な状況ですから凶器もなかなか手に入らなかったり、全員死刑囚ですからどうやっても助からないのは目に見えているのに、それでも犯罪は起きるんですよ。
真相は物理的にやや無理があるのではないかと思われるところもあったのですが、それはそれとして犯人の心の動きが面白くてさいごまで一気に読んでしまいました。帯にもありますとおりこれはチェスタトンの系譜だと思います。(「~~の名誉」という章もあります)全体を通して語り手となるアラン・イシダ自身の事件を解明する最終話もさることながら、それに続くごく短いエピローグにすばらしい味わいがあります。

死と砂時計 (創元推理文庫)


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麻耶雄嵩『神様ゲーム』(講談社文庫) [ミステリ]

戦隊ヒーローに夢中のぼくはある日クラスメイトの鈴木君から、自分は世界のすべてを創造した全知全能の神様なのだと打ち明けられる。その鈴木君から最近町内を騒がす猫殺しの犯人を教えられたぼくは、半信半疑ながらも仲間たちとともに調査を始めるが……
どんな風に教えてくれるのかというと、名前と住所をそのままずばりとです。何でも知っている神様ですから当然実在する人物だし、言われてみれば確かに怪しいんですね。とはいえ、読者が一番最初に犯人を知らされる倒叙推理というジャンルが既にありますし、犯人がわかったからって面白さが減るわけではないんですよね、もちろん。
犯人がわかっても小学生だけではどうしようもない子どもたちの上に降りかかる新たな事件から急転回を見せる物語はおそるべき結末を迎えますが、主人公はせっかくそこにいる神様の鈴木君にもなかなか話を聞きに行かないし、鈴木君もそれほど前に出てくるシーンはありません。
もとは子ども向けミステリーレーベルの一冊として刊行された本なんですけれども、半信半疑のままひとりで悩んでひとりで真相と対決することになる主人公が、ちょうど読者として想定された世代の年齢層と一致するのはなかなか毒が効いていますね。そんななかで神様のやさしさを感じる部分といえば、ヒーローものの数週後のネタバレをしないところでした。

神様ゲーム (講談社文庫)


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ピエール・スヴェストル、マルセル・アラン『ファントマ』(風濤社) [ミステリ]

二十世紀初頭、ベル・エポックのパリを騒がせる悪党ファントマ。神出鬼没、正体不明の怪人が繰り広げる恐るべき犯罪を描く人気大衆小説シリーズの第一巻の完訳です。
先にネタバレしてしまいますと、このシリーズは後々何十巻も続く超人気作品になりますので、タイトルの怪人ファントマは捕まらないし死にません。シリーズがこれで終わってしまうことはないという点については安心して下さい。
ただですね、ファントマは確かにおしゃれで頭が切れて絶対にやられない最高のダークヒーローではありますけれども全然好ましいところはなく、義賊であるとか人殺しはしないとか無関係の人々を巻き込まないなどの美点は特にありません。容赦なく他人をひどい目に遭わせますし狡知を尽くして脱出しますし反省もしないようなので、そのあたりはどうかご承知置きをお願いします。
彼を追うパリ警視庁のジューヴ警部もそんなに無能というわけではないんですけれども、最終的にこのお話はファントマにしてやられる形で終わります。家族をファントマに利用された青年など今後のレギュラーキャラクターも登場し、ジューヴ警部とともにファントマと対決することになるそうで、続編の(とりあえず特に面白いやつからだけでも)翻訳も期待しています。

ファントマ


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G・K・チェスタトン『ポンド氏の逆説』(創元推理文庫) [ミステリ]

温厚で小柄な紳士であるポンド氏には、会話の途中にさらりと突拍子もない発言をする奇妙な癖があった。何気ない世間話に別の方向から光を当て、意外な意外な真相を明らかにしてしまうポンド氏の論理の数々は……
死刑執行延期命令を持った使者が途中で死んだので囚人は釈放された、と言われたら「ん?」と思いますよね。そんな感じの首をかしげたくなるエピソードが、驚くことに間違いなく論理的な解説といっしょにぞろぞろ出てきます。ミステリ中心の文庫から出ていますけれども、身近で起きた犯罪や謎よりはもうちょっと非日常的な、でもシンプルな殺人や盗難ではない事件が多いんですよ。スケールの大きな設定も含まれていて、現代日本で読むと歴史小説のような趣を感じられて楽しいです。
作品それ自体とはあまり関係のないところの話をしますと、訳・南條竹則&解説・西崎憲って組み合わせ、ミステリファンよりむしろ幻想小説ファンが色めき立つ組み合わせじゃありませんかね。

ポンド氏の逆説【新訳版】 (創元推理文庫)


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日影丈吉『内部の真実』(創元推理文庫) [ミステリ]

日本統治下の台湾で起きた軍人同士の決闘騒ぎ。一人は銃殺、一人は頭部を殴られ意識不明の状態で発見された事件は単純なものと思われたが、現場に残された拳銃には不審な点が。やがて捜査の過程で複雑な人間関係が浮かび上がり……
戦時中の台湾の雰囲気がとても印象的なので、まずはそこを楽しんでいただきたいです。そのうえで大変に本格的なミステリでした。うかつにしゃべるとネタバレになってしまいそうなタイプの。
主な探偵役となるのは軍でも鑑識の専門家として一目置かれる大手大尉、ではなくその助手の勝永伍長です。愛嬌のある描かれ方をする彼とは別に、冒頭から語り部として登場する小高軍曹の視点でストーリーが進んでいくのですが、小高が密かに思いを寄せる女性や彼女をめぐる軍人たちが絡み、小さな社会での単純な事件は解決の気配も見えないまま迷宮へと運ばれてゆきます。
軍隊だとか痴情のもつれだとかいうとなんだかとてもなまぐさいお話のようですが、特異な状況設定からかまるで長い夢を見ているかのような不思議な小説でした。それでいて間違いなく、本格ミステリでもあったんですよ。

内部の真実 (創元推理文庫)


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キャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』(創元推理文庫) [ミステリ]

クリスマスを目前にしたある日、二人の少女が姿を消した。一人は州副知事の娘、もう一人はその親友でホラーマニアの問題児。十五年前の同じ時期に起きた誘拐事件で妹を殺された刑事、顔に傷跡のある女性法心理学者、州警察の捜査官やFBIが手がかりを追っているころ、誘拐された少女たちは力を合わせて監禁場所からの脱出を試み……
捜査に当たるメンバーが色んなところから来ている上にあまり褒められない性格の人物も少なくなく、あちこちで揉めながら捜査を進めてゆく群像劇の趣があって面白いのですが、同時進行で語られる誘拐された少女たちの冒険も大変です。B級から名作まで大量のホラー映画を鑑賞し、血まみれの目玉などの小道具で大人を驚かすのが大好きな問題児が、ホラーマニアとしての知識を駆使して誘拐犯をあざむき親友を励ましながら戦う、滑稽だけど泣ける展開ですよ。彼女の話題が濃すぎて巻末に「映画に関する註」がついてくるレベルです。
パトカーが一台しかない小さな町の事件、関係者はだいたい全員が顔見知り、その中に犯人がいるはずの状況ながら終盤までいっさい姿を現さない描写もみごとです。なかなか分厚い文庫本ですが納得の読みごたえです。

クリスマスに少女は還る (創元推理文庫)


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深緑野分『オーブランの少女』(創元推理文庫) [ミステリ]

どこを切っても少女と少女、ときどき少女と女あるいは少女と男がみっしり詰まった短篇集です。謎があって殺人などの事件があるのでジャンルはミステリです。
まずは著者のデビュー作でもある、美しい庭と管理人の姉妹をめぐる表題作を読んでびっくりしていただきたいんですよ。衝撃的なオープニングからどこの時代ともわからない夢のような日々、おそるべき結末までほんとうにお見事でしたから。
五つの短篇はどれも別の時代と別の場所を舞台にしていて、それぞれにつながりはありませんしどこから読んでも問題なく入れると思います。ただ最初から最後まで通して読むと、少女にまつわるミステリというテーマははっきりと見えてきますし、なんとなく関連性が意図されているのかなぁとも感じられます。最初と最後のお話は特にひとそろいで考えたくなりました。

オーブランの少女 (創元推理文庫)


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ジョン・ディクスン・カー『絞首台の謎』(創元推理文庫) [ミステリ]

会員制クラブに届けられた精巧な絞首台の模型を発端に、ロンドンを騒がす奇怪な事件が続発する。死者の運転するリムジン、霧の中に浮かび上がる絞首台のシルエット、地図にない幻の街……
クラブに滞在するエジプト人や、彼をめぐって数年前にパリで起きた未解決の事件など、不気味な謎の数々に挑戦するのがパリの予審判事アンリ・バンコランです。不可能犯罪でおなじみカーの作品らしく、どうやっても合理的に解決できそうにない怪事件がわかってみれば意外とあっさりした真相に落ち着くのですが、何せ名探偵の性格が悪魔的なので不吉な雰囲気が全編に漂っています。事件の中心にいる人物は早々に明らかになり、その周辺や過去のできごとを掘り起こしはじめてからどんどん勢いがついていきます。ものすごくいいところで章が終わるのもカーらしいです。
本作ではちょっとだけ加えられた男女のラブコメ要素が後年のカーの作品を思わせ、霧深いロンドンの怪事件にわずかな彩りを添えています。ほんとうにわずかなので、不気味なものがお好きな方はご安心下さい。

絞首台の謎【新訳版】 (創元推理文庫)


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ヘレン・マクロイ『月明かりの男』(創元推理文庫) [ミステリ]

ヨークヴィル大学をおとずれたニューヨーク市警のフォイル次長警視正は、その日の夜が指定された「殺人計画」のメモを拾う。予告された時刻にふたたび大学へ足を運んだ警視正は、亡命した化学者の死体を発見する。しかも、現場から立ち去った謎の人物の目撃証言はそれぞれまるで異なっており……
1940年発表の、戦争の影が世界を覆う時代を背景に展開するミステリです。といっても主な舞台は大学で、ヨーロッパから亡命してきた被害者をめぐっての確執か、ナチスの陰謀か、はたまた自殺かというところでじりじり足踏みします。
容疑者は大学の関係者ぞろいで、理事や学部長などえらい人のほかに心理学や人類学の教授も含まれています。探偵役のベイジル・ウィリング博士の、精神科医としての意見がうかがえますし、シリーズを通じて登場する人物が初めて顔を出したりもします。
心理学の実験や当時最先端だった嘘発見器によるテストなど、時代が垣間見える小道具も印象的です。なにぶん古いもので、科学的でかっこいいと思うより滑稽で不気味に見えてしまうところが思わぬ効果を生んでいます。

月明かりの男 (創元推理文庫)


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小林泰三『安楽探偵』(光文社文庫) [ミステリ]

この街でいちばんの名探偵のもとを、今日も奇妙な依頼人が訪れる。熱狂的な男性ファンにつけ回されていると主張するアイドル、嫌いな人間を消す能力を手に入れてしまった会社員……事務所から一歩も出ることなく来訪者とのやりとりだけで推理を行い、事件を解決してしまう探偵の正体は?
安楽椅子探偵とすらいえない、本当にまったく何もしないでちゃんと事件を解決するタイプの名探偵です。どうも小林さんの作品というと、主人公が無事出口のない結末に陥って終わるSFやミステリのイメージが強かったのですが、こちらは探偵も助手(語り手)もどうやらしばらくはこの街で安泰に暮らしてゆけそうでびっくりしました。いや違います安心しました。
全六話、依頼人もしっかり納得して帰ってくれるし、時間と空間がゆがんだりもう一度最初からやり直しになったりもしない、一般的な意味でのミステリなので小林さんの本を前から知っている方もどうか安心して下さい。ぞぞっとするシーンも多少はありますが、全体としては大丈夫です。大丈夫ですったら。

安楽探偵 (光文社文庫)

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