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A・ジュリアーニ編『タッソ エルサレム解放』(岩波文庫) [詩歌・戯曲]

どっちが著者だかよくわからないタイトルですね。こちらは16世紀のイタリアの詩人タッソの長編叙事詩『エルサレム解放』を、20世紀イタリアの詩人ジュリアーニが抄訳とあらすじ解説をまじえて語り直した作品になります。原作の要所要所を抜き出したうえで、それ以外の部分のストーリーを解説してくれる読みやすいつくりになっています。
エルサレム奪回を目指す十字軍をテーマにしたキリスト教徒とイスラム教徒の戦いを描いた英雄叙事詩で、プロテスタントの隆盛に対してローマ・カトリック教会の活動も活発化した対抗宗教改革時代のど真ん中に書かれた作品です。全体の三分の一くらいの詩とジュリアーニのあらすじ&解説を加えての日本語訳が文庫で2センチ以上の厚さですからけっこうな長さです。全訳の長さを考えるとめまいがしますが、ジュリアーニさんによる解説のテキストも面白いのでテンポ良く読み進められます。
びっくりすることに、イスラム教徒側がとてもかっこいいんですよ。確かにキリスト教の教義と正しさはことあるごとに強調されるものの、それはそれとして一騎打ちや戦場の恋をうたいはじめると作者の筆は思想をほったらかして舞い上がってしまいます。十字軍の話ではなく『イリアス』を読んでいるのではないか、と途中何度か思いました。

タッソ エルサレム解放 (岩波文庫)

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エンデ/シュレーダー『影の縫製機』(長崎出版) [詩歌・戯曲]

ミヒャエル・エンデの詩にビネッテ・シュレーダーが絵をつけたとても豪華な本です。見開きの半分以上は挿絵ですがそれぞれの作品に必ず詩がついていますし、絵本というより詩画集の趣ですね。四角くて黒一色の表紙もかっこいいです。
『モモ』『はてしない物語』などのエンデと『おともだちのほしかったルピナスさん』などのシュレーダー、どちらがお好きな方も名前だけで手に取ってしまって問題ありません。わたくしは作者ふたり両方のファンだったので大いに楽しみました。ただしぱっと見た感じは、子どもの本の彼らとは全然違います。エンデの大人向けの作品に親しんでいた人ならすんなり入れると思うんですけれども、もっぱら児童文学のくくりの中で見ていると新鮮な印象です。不気味なものもあれば楽しいファンタジーもあり、くすりと笑ってしまう冗談みたいなのもあります。雷鳴の中を駆ける騎士の挿絵に人を食ったオチがつけられる「嵐の騎士」なんて最高ですね。
シュレーダーの挿絵も、一枚だけ眺めているとそれだけでストーリーが浮かんできそうです。黒一色刷り、不思議な詩の世界をそのまま絵にしているので、現実にはあり得ない光景が何でもなく描かれているのがシュルレアリスムに近い味わいを感じました。エンデの父はシュルレアリスムの画家でしたし、挿絵としての相性は抜群だと思いますよ。

影の縫製機

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ホメロス『イリアス〔上・下〕』(岩波文庫) [詩歌・戯曲]

神話の時代におけるギリシアとトロイアの戦いを題材にした一大叙事詩です。世界史に出てくるようなお話ですけれども、歴史的事実をもとにしたフィクションのはずです。
まずびっくりしたのは、有名な黄金のリンゴのエピソードも木馬も出て来ないんですね。トロイア戦争が始まって10年くらいした頃の、ヘクトルの死に至るまでのごく短い期間の激戦だけをとんでもない高密度で語っています。
二つ目に驚いたのは、両軍の人間や神々の名前に添えられる枕詞や、随所に挟まれる比喩のいちいち詩的でかっこいいことです。うまいこと言うなぁというのではなく、古代叙事詩らしい言い回しと雰囲気にあふれていて、思わず唸りながらページをめくる手を止めてしまう味わいがあります。ちょっとめくってみただけでも「輝く兜の大ヘクトル」「白い腕の女神ヘレ」なんてのがちらほら見えます。こんな名調子を息をするように繰り出してくるんですから、もうたまりません。
何せ大昔の話なので、訳注がないとよくわからない部分もちらほらあります。それどころか、テキストの解釈の問題などで訳注でもよくわからない部分もありますし、そもそも今の感覚からは理解しがたい登場人物もいますけれども(具体的には突っ込みどころの多すぎるアガメムノン王ですよ)、それらを全て吹っ飛ばしてあまりある語りのかっこよさは読まずにいるのはもったいないです。特に戦闘シーンなんて、後世の小説や演劇、現代のバトルまんがやゲームにも影響を与えているに違いありません。

イリアス〈上〉 (岩波文庫) イリアス〈下〉 (岩波文庫)

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西條八十訳『訳詩集 白孔雀』(岩波文庫) [詩歌・戯曲]

童謡の作詞でおなじみ西條八十の訳詩集です。序で述べられる「訳詩は語学者ではなく詩人の仕事である」という信念がびしびし伝わってくる、上田敏ちゃん『海潮音―上田敏訳詩集 (新潮文庫)』や荷風『珊瑚集』、堀口大學『月下の一群』の隣に並べたくなる1冊です。昭和初期の装丁を再現した、赤い市松模様の表紙もかわいらしいですね。
いきなりイエーツに始まり、テニスン、ド・ラ・メーヤ、ポオなどよく知られた詩人の名作がしっかり押さえられている一方で、巻末の作者・原題一覧を見ても良くわからないマイナー詩人までかなり幅広くセレクトされています。英訳からの重訳とは言え、まさかこんなところでタゴールの名前を見ることになるとは思いませんでした。フランスに留学していたこともある人なので、英語圏の詩だけでなくフランス詩人の作品も多数収録されています。
この辺りは最初に挙げた明治大正期の翻訳詩集の流れを汲んでいるようですけれども、本書は『世界童謡集』から子ども向けの訳詩が収録されているところがひと味違います。童謡作家としても知られた彼ならでは…なのかどうかはわかりませんが、1篇だけエリアナア・ファージョンの詩も入っていたのには驚きました。タゴールどころではない、まさかこんなところでの名前でしたよ。

なお、この記事に登場した詩人の名前については本書での表記を適用しております。


訳詩集 白孔雀 (岩波文庫)

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オマル・ハイヤーム『ルバーイヤート』(平凡社ライブラリー) [詩歌・戯曲]

11~12世紀のペルシアの科学者オマル・ハイヤームの遺した四行詩の翻訳です。原語からの翻訳・英訳からの重訳を合わせてこれで4冊目になりますがいつ読んでも良いものです。
何せ古い作品なので明らかにハイヤーム作ではなさそうな詩もちょこちょこ混じっていると言われるルバーイヤートですが、本書では信頼性の高い資料を参考にハイヤーム自身の手によると思われるもの、及び人口に膾炙しているものを百首精選しているそうです。サーデク・ヘダーヤトによる『ハイヤームの四行詩集』に則った分類もされているので、今までの翻訳とはちょっと違った感覚で読めました。
「太初からの運命」「土から土へ」などペルシアの世界観を端的に表す8つの章ごとに、王政時代のイランを知る訳者による詳細な解説が付されているのが特徴です。それも既に数十年前の出来事であり今では歴史の一部となっているわけで、現代の私たちが知るイランとハイヤームの時代をつなぐ興味深い読み物になっています。残念ながら現在のイランは行きたいと思ってすぐに行ける場所ではありませんが、イランの文化に触れてみたいと思わせる印象的なエピソードがいくつも出てきます。

ルバーイヤート (平凡社ライブラリー)

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『自選 谷川俊太郎詩集』(岩波文庫) [詩歌・戯曲]

谷川俊太郎の半世紀以上、二千数百篇におよぶ作品から編まれた自選詩集です。肉筆のノートから持ってこられた表紙の図版が何とも渋いです。意味もなく旅行に持って歩いて、作中に登場する風景とは全く関係ない場所で楽しみたくなります。
ちょっと厚めの文庫に作者自身が精選した173篇を収録した、これぞ決定版…とは言い切れないのが落とし穴で、その辺りはまえがきでも触れられています。しかしながら50年を超える仕事のそれぞれの時代からまんべんなく採られているので、谷川さんを初めて知るにはもってこいの1冊です。
怖いものから面白いもの、意味がないもの、具体的なもの、大人向け子ども向けと本当にバラエティ豊かに取りそろえてあって、作者は一人きりなのにも関わらず一冊のアンソロジーを編んでしまった感があります。
巻末に詳細な年譜がついているので、そのときの作者の状況と作風を見比べるというあれな読み方も出来るですが、個人的にはそれよりも目次を眺めてひたすらにやにやしていたいところです。

自選 谷川俊太郎詩集 (岩波文庫)

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茅野蕭々訳『リルケ詩抄』(岩波文庫) [詩歌・戯曲]

1927(昭和2)年、リルケ没年の翌年に刊行された翻訳です。我が国でリルケがまとまって紹介された初めての本だそうです。ちょっと昔風の、しかし古語にまではいかない口語体の翻訳で、読みやすく心地良い、ベッドの横に置いておきたくなる雰囲気の本です。市松模様の拍子もかわいらしいですね(下の画像をご参照下さい)。
私はリルケというと、宗教的あるいは神秘的なイメージがあって(何せ、ばらの刺を刺したのが死因という人なので)、ちょっと不思議で近付きがたい詩人さんかと思っていたですが、本書は素朴で気取らない雰囲気の訳文もあって、大変取っつきやすかったです。神様に呼びかける詩も、全体の流れの中では特に構えずにすらすら楽しめました。
今書いた怪しげな印象に加えてもうひとつ、リルケさんは女らしいというイメージがあったんですけれども、こちらの方は見事に思っていたとおりでした。日本語訳の、穏やかな語り口でありながらどこか悩んでいそうな雰囲気が、実に。中原淳一の挿絵が似合いそう&女学生の机の上にありそうな詩集です…と、思っきしステレオタイプなたとえをしたくなりますよ、もう。

リルケ詩抄 (岩波文庫)


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佐佐木信綱校訂『新訂 新古今和歌集』(岩波文庫) [詩歌・戯曲]

古代~中世日本の歌集で万葉・古今・新古今のうちどれが好きかと言われたら、迷わず新古今を推します。技巧に溺れすぎとか力強さがないとか言われるむきはありますが、わたくしとしては「掛詞が面白い」この一点だけで楽しくて仕方がないので、江戸時代以降の学者の皆さんが何を言っていようが新古今派でございます。はい。中でも定家が好きで好きで…という話は、以前にも何度かさせていただいています。
歌をひとつずつ見ていく前に、目次から既に中世日本の価値観が表れているのが興味深いですね。季節の歌は秋>春>冬>夏の順にページ数が多いとか、恋歌だけ5巻もあるですとか。実際にページを開いてみると、恋歌の巻にありながら直接的に恋愛について触れていない歌の多いことにも驚きました。ページ上の見出しには確かに「恋歌 一」とあるにも関わらず、現代の目でパッと見ると、ただの風景について喋っているような調子の歌が。これは別に、昔の日本だけに限った趣味ではないと思うんですけれども、見た人があれこれ考えて解釈して、自分の思い出も投影して楽しめるくらい、幅のある芸術というのが好きなんですね。
技巧の話で言いますと、特に地名を絡めた掛詞が大好きです。悲しい歌でも、「待つ」と来ればまず「松」や「待乳山」に引っかけて来るので、これは実は余裕があるんじゃないのか、あるいは苦しさを手垢の付いた定型文に押し込めることで耐えようとしているのか…と、あれこれ深読みしてしまいます。ですけれども、当時の歌の名手は代作することも普通だったようなので、全部が全部作者の実体験に基づいた歌だと思って読むのは、ちょっと違っているんでしょうね。

あまり新古今集とは関係ない話ですが、掛詞が大好きな私は、最近西国三十三所御詠歌が気になっています。三十三カ所分、地名をきっちり詠み込んで、信仰に絡めた歌に仕上げるセンスに感動しました。


新訂 新古今和歌集 (岩波文庫)

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塚本邦雄『王朝百首』(講談社文芸文庫) [詩歌・戯曲]

実は百人一首には、それほど大した歌は選ばれていないんじゃないかというところからスタートして、王朝時代(平安期~鎌倉初期)の百首を選んで編んだアンソロジーです。複数採られている人が何人かいるので、百人から一首ずつではありません。
私が百人一首に親しんでいたのは小中学校時代のことでした。全部おぼえて意味も大体知っていて、しかし出来不出来まではとても頭が回らない年頃なので、今回著者のような見方があることにまず驚いて、それから納得しました。本家の小倉百人一首が好きな人も、全然おぼえていない人も、秀歌のアンソロジーをひもといて自分の頭と目で鑑賞する楽しみを教えてくれます。私はもう、以前塚本さんの本で読んで以来の定家ファンですね、やっぱり。
全く新しい観点から編まれた百選なので、百人一首からは漏れた歌人が5分の2を占めています。そもそも王朝歌人に全然詳しくない身なので、名前を知らない人ばかり出てくるのが新鮮で新鮮で…その一方で、まさか歌集で名前を見るとは思わなかった歴史上の人物を見つけて仰天もしました。平安末期と言えば、保元・平治の乱から源平の戦い、鎌倉幕府の誕生へ向かう内乱の時代だったことを、たまに忘れてしまいます。歌に添えられた歌人小伝にはこんな時代背景も読み取れて、作品そのものの鑑賞とは別の意味で興味深く、しょっちゅう手が止まってしまうのが困りものでした。

王朝百首 (講談社文芸文庫)


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谷川俊太郎『夜のミッキー・マウス』(新潮文庫) [詩歌・戯曲]

今までうちにあった谷川さんの詩集は『空の青さをみつめていると』『朝のかたち』の2冊でした。手軽な文庫本で代表作が網羅されてるから問題ないですね、みたいな顔をしてきたですが、考えてみたら最近の作品が入っていませんよね。
ということで、比較的新しい詩集が文庫化された本書を手元に。青一色の表紙が格好いいです。
この小さな本の中に入っている詩を書いた人は、ずいぶん前に「二十億光年の孤独」を書いたかつての青年詩人と同じ人で、彼が年をとってからもずっと詩人を続けていたら、なるほどこんな詩をつくるようになるんだろう…と納得しました。長いこと活動している作家さんの中には、ずっとスタイルが変わらない人や時代の変化に合わせて変わっていく人がいますけれども、自分の年齢に合わせてスタイルが変化しながらずっと創作を続けていくというのも良いですね。デビュー当時は速球派で、ベテランになると技巧派に切り替えて現役を続けるピッチャーみたいな。
ところでこの詩集の白眉は、文庫あとがきで著者に「ときどき女性のかたで題名が口にできなくて、「例のあの詩」としか言ってくれない人がいるのが可笑しい」と書かれてしまった一篇だと思うんですね。これはもうとんでもない衝撃、読むと何故か涙が出そうになる名作なので是非ご覧下さい。どの作品かは目次を見れば一目瞭然かと思いますので、せっかくだからここではタイトルを伏せておきます。

夜のミッキー・マウス (新潮文庫)

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