So-net無料ブログ作成
検索選択

パトリシア・ハイスミス『キャロル』(河出文庫) [海外小説]

デパートのおもちゃ売り場で働く舞台美術家志望のテレーズは、娘のクリスマスプレゼントを買いに来た美しい女性キャロルに一目で心引かれる。衝動的に彼女へクリスマスカードを送ったことをきっかけに二人は親しくなるが、家庭に問題を抱えるキャロルとの交際は思わぬ方向へと……
パトリシア・ハイスミスといえば、人間のいやな部分を凝視した登場人物の誰も好きになれそうにないミステリや短篇のイメージが強かったですがこちらはなんとふつうの恋愛小説です。もともと心理描写は抜群にすばらしい人ですから、ミステリではないものを書いたっておもしろくないはずがないんですけれども、いやな気分だけでなく幸せな気持ちも全部描かれた恋愛小説は驚くほど素敵でした。脇役ではちゃんと不愉快な人物も出てきますし、主人公の揺れる気持ちもなかなかに身勝手で現実味があるので、これまでのハイスミス作品がお好きな方もどうぞご安心ください。
大変まっとうで美しい恋愛小説であることももちろん、1951年に発表されたことを思うと結末に拍手喝采したくなります。巻末に付された著者のあとがきや2010年版序文でさらに感慨が深まります。

キャロル (河出文庫)

nice!(6) 
共通テーマ: