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久生十蘭『魔都』(創元推理文庫) [ミステリ]

大晦日の東京の夜、夕陽新聞記者の古市加十は日比谷公園の鶴の噴水が唄うという奇妙な噂を耳にする。それをきっかけに知り合った来日中の安南国皇帝は行方をくらまし、さらに彼が持ち込んだとされる宝石をめぐる駆け引きが浮上して……
昭和九年の大晦日から一月二日未明、わずか三日間の東京を駆け抜ける長篇ミステリです。とはいえ明確に指名される犯人を追及するというより、探偵役をつとめる警視庁の眞名古明警視が対決するのはタイトルにもなっている「魔都」東京そのものという趣です。登場早々『レ・ミゼラブル』のジャヴェルそっくりと言われるこの警視と、冒頭で出てきたいかにもぱっとしない記者古市氏の名コンビでみごと事件を解決、という展開には最初に申し上げておきますがならないです。
安南国皇帝の愛人墜死事件、ダイヤモンド行方不明事件、噴水の鶴の歌事件と山積みの問題を前に、辞職願を懐に必死の捜査を続ける眞名古も特ダネを狙う加十も警察もやくざもその他の関係者たちも、みんなして無秩序に大きくなってゆく事件に引きずり回されていただけでは、と読み終えて振り返ると思います。1936年発表の、現実のきなくささをも匂わせる帝都の狂騒に読者もまた巻き込まれ、戻ってこられなくなりそうな都市小説でした。

魔都 (創元推理文庫)


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