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福永武彦『風のかたみ』(河出文庫) [国内小説]

信濃から都へ上った大伴の次郎信親は、かつて中納言に愛された叔母の忘れ形見の姫君に思いを寄せる。都を騒がす正体不明の盗賊不動丸もまた姫君を付け狙うが、姫君はただ一度だけ出会った貴公子を忘れられず……
「今昔物語」のなかのいくつかのエピソードを題材にした王朝ロマンです。上記のような男女の恋が絡まり合い、さらに幾人かの登場人物たちの思惑が交錯したストーリーで一気に読み終えました。おもしろくて読みやすくてしかも文章が格調高い、どこにも隙がありません。あまり読まないジャンルなので時間がかかるかと思っていたらまったくそんなことはなく、先が気になってページをめくっていたらもう読了していました。
導入部分から登場する陰陽道の修行を積んだ法師、次郎と関わりを持つ笛師とその娘、都の治安を守る検非違使の尉など、王朝ものの雰囲気を盛り上げるキャラクターも魅力的です。姫君との恋を諦めようとする貴族の青年が、あまり悪いふうに描かれていないのがよろしいですね。幸せな話ではないのですが、オープニングと呼応するようなものさびしいラストシーンまで、平安時代終わりかけごろの空気をまとった小説でした。

風のかたみ (河出文庫)


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