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獅子文六『七時間半』(ちくま文庫) [国内小説]

東京-大阪間を七時間半で往復する特急「ちどり」を舞台に描かれる、乗務員たちと乗客たちそれぞれの思惑が交差する人間模様。
食堂車で働くウェイトレスと、彼女にプロポーズの返答を迫られるコック助手の青年、三人の男から好意を寄せられる客室乗務員の美女の出番が多めですが、走行中の列車内で起きるハプニングは恋愛がらみだけとは限りません。食堂車に居座る迷惑な酔っぱらい、熱海で乗り込んでくる謎の美女、三号車の首相とその警備員たちなど、いるだけで不穏になる乗客たちに加え、後半では時限爆弾の噂まで飛び交うスリリングな展開が待っています。
それはそれとして、長距離特急は何ごともなく無事に運行されているだけでもなかなか緊張感があると思うわけです。
東京を出発して横浜、熱海、浜名湖、名古屋、関ヶ原、米原、京都そして大阪とだいたい今の東海道新幹線と同じルートをたどりながら、食堂車や社内サービスの裏側が乗務員目線で語られるのがこの作品のもうひとつの楽しいところです。こっちだけでもいつまででも見ていたくなる面白さなのですが、七時間半が終われば特急ちどりは嫌でも大阪駅に到着、今回の東京-大阪間の物語は幕を閉じる、そういう思い切りのよい小説でもありました。

七時間半 (ちくま文庫)


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