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イリヤ・トロヤノフ『世界収集家』(早川書房) [海外小説]

アラビアン・ナイトの翻訳者として知られる英国の冒険家リチャード・フランシス・バートン(1822-1890)の生涯を、彼の人生に関わった人々の目を通して描く伝記っぽいフィクションです。英国領インド→アラビア→東アフリカと、史実のバートンが世界各地で過ごした時代を取り上げ、彼自身の視点と当時の彼を取り巻く人々の語りから浮かび上がらせています。アラビアン・ナイトの話はほとんど出てきませんし、文学者ではなく軍人・探検家としてのバートン像が中心に据えられています。そのあたりの予備知識なしに読み始めても問題ないくらい面白いです。
訪れた土地に溶け込んでゆこうとするバートン自身の目線と、彼をめぐる現地の人間たち(案内人であったり、彼の正体について調査する役人たちであったり)のシーンが虚実を織り交ぜつつ入れ替わり立ち替わり登場し、それぞれの見ている世界の違いがきわだつ構成になっています。
どちらの言い分もそれぞれの立場からですから、植民地にやってきて現地の文化を理解したつもりになっている英国人にも、命の危険もかえりみずのめり込む研究者にも見えます。たとえばバートンが評価していた案内人たちが、後から話を聞くとバートンをぼろくそに言っていたりするわけですが、それはそれとしてこの冒険物語が抜群におもしろいことに変わりはありません。インド人イスラム教徒に変装してメッカ巡礼とか、ナイル川の水源を探しにアフリカ探検とか、翻訳の仕事を全然知らなくても興味を引かれるじゃありませんか。

世界収集家


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