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石井好子『いつも異国の空の下』(河出文庫) [随筆・日記]

1950年8月、まだ粗末だった羽田空港からサンフランシスコ行きの飛行機に乗り込んだ日本人歌手が、二十世紀なかばのアメリカからパリ、ヨーロッパ各地やキューバまでを旅した八年間の回想です。
料理エッセイで有名な人とばかり思っていたのでぜんぜんオムレツのにおいがしないことに最初はびっくりしていました。ご飯の話よりショービジネス界の話、それと思いがけず20世紀の激動の歴史によりそう人々の話になっていますね。読書方面以外では料理じゃなくてシャンソン歌手として有名な人ですし。
戦後しばらくした日本を離れた女性が異国でシャンソンを学びながらどのように生きたか、当時出会った人々の息遣いに満ちた記録として読めるのはもちろん、ショーの世界の裏側を垣間見られる楽しみもあります。ほんの八年間で驚くほど様変わりするパリの芸人たちの世界、新鮮なブロードウェイのミュージカル、革命前夜のキューバまで、今となっては歴史の一ページじゃありませんか。歌手としての修業や同僚との友情みたいな個人的な思い出も、その陰に否応なしにくっついてくる世界情勢も、振り返れば一冊の本になってしまうんですよ。


いつも異国の空の下 (河出文庫)

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