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ケイト・モートン『秘密〔上・下〕』(東京創元社) [海外小説]

少女時代のローレルの目の前で、訪ねてきた旧知らしき男に突然ナイフを突き立てた母。五十年後女優として成功したローレルは、母の所有品から見つかった一枚の写真をきっかけに、幼い日に目撃した母の行動の謎とその過去を探りはじめる。
2011年のローレルがインターネットや弟の協力を手がかりにおこなう調査と、1941年に生きるローレルの母ドロシーの視点で交互に語られる小説です。先に進むにつれてドロシーの恋人ジミー、戦時下のロンドンで知り合う女性ヴィヴィアンなど登場人物も増え、語り手の視点も重層的になってゆきます。
ですから全体の半分くらいは戒厳令下のロンドンの人々の暮らしを描いているのですが、空襲に怯える人々あり国防婦人会あり、一方で優雅な生活をちっとも崩さない上流階級などもあらわれて鮮やかな切り口です。そんな中で自分の夢を叶えるために努力を重ね、やがてる娘ドロシーの生活は波乱に満ちているのですが、現代で調査を進めるローレルの身には特に何らかの脅威が迫ることはありません。にもかかわらず大変スリリングで、過去のできごとを並行して読み進めている読者には時々もどかしくもはらはらする楽しみは少しも失われていません。
現実の歴史とリンクしつつ、ところどころに虚構や意図的な年月のずれも含まれた、あたまに「歴史」とつけるにはあまりにも個人的なできごとをていねいに追いかけたけっこうなミステリでした。

秘密 上 秘密 下

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