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ウンベルト・エーコ『ヌメロ・ゼロ』(河出書房新社) [海外小説]

新たな日刊紙の創刊を目指し、準備号となる第ゼロ号(ヌメロ・ゼロ)製作のために集められた編集者たち。じっさいには出資者の利益のためだけに考えられたこの企画の現場は、虚飾と捏造にあふれたジャーナリズムの縮図となってゆく。一方、スタッフの一人はムッソリーニの死にまつわるミステリを独自に調査し、そこからイタリア史のさまざまな事件を経て現代へとつながる陰謀説を展開するのだが……
1992年のイタリアを舞台に、当時じっさいにあった事件を絡めながら展開するフィクションです。刊行は2015年ですしそもそも編集部の人々などメインの登場人物は作者の創作ですから、特にイタリア現代史に詳しくなくても楽しめる小説です。なんたって現代日本のジャーナリズムの現場でもありそうなんですもん、こういうこと。ありそうとは言いましたがわたくしがそういうお仕事に深く関わっているわけではないので、雑誌や新聞の編集のお仕事をされている方にはぜひともお読みいただきたい小説ですね。
創刊準備号の企画を依頼され、デスクをつとめることになった主人公の目に映るおかしな編集部のやりとり、ナンセンスな喜劇だと思うと笑えるんですけれどもジャーナリズムの現場だと思うと顔が引きつります。ひとり情熱的に陰謀論を語る人物の存在が、後半でびっくりする急展開をもたらすのが効いているんですけれども、これもジャーナリズムの現場の一面と思うとまた笑えません。笑えないという時点でもう、罠にはまっている気がします。

ヌメロ・ゼロ


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