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ジョン・ディクスン・カー『テニスコートの殺人』(創元推理文庫) [ミステリ]

雨上がりのテニスコートの真ん中で発見された絞殺死体。残された足跡は被害者のものと、被害者の婚約者ブレンダが死体まで往復したものだけだった。彼女の無実を信じる事務弁護士ヒューは、彼女への容疑を逸らしつつ真相を探り始めるが……
足跡が片道しかない絞殺死体という、これはもう誰がどう見ても実行不可能な犯罪ですよ。犯人捜しはもちろんのこと、どうやって実行したのかも追求される歯ごたえのある探偵小説なのですが、全体的なイメージはラブコメディです。殺された男がすごく嫌なやつだわ、婚約者の女性と主人公の青年がうまくいきそうになったりいかなくなりそうになったりするわ、ヒロインには過保護な後見人が付いてたりするわでそりゃもうラブコメです。探偵役として中盤から顔を出すギディオン・フェル博士が奮闘を始める前から、すでに十分コメディ要素が山盛りです。
カーといえばおどろおどろしいオカルト仕立ての舞台設定や人間業では考えられない不可能犯罪のイメージが強いですが、毎回のように作品を彩る男女の恋愛をめぐるどたばたも忘れてはいけません。ついでにもうひとつ外してはいけないと個人的に信じているのが「科学的だけど実現には無理がありそうなトリック」で、本作の足跡なき殺人の真相もまぁ、他のケースには応用できないし無茶だと思いますよ正直なところ。それも含めて、カーの喜劇的で楽しいミステリの中でも代表作と呼んで差し支えないのではないかと思います。

テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

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