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長山靖生『偽史冒険世界』(ちくま文庫) [学術書]

源義経ジンギスカン説から日本人の祖先はユダヤ人だった説まで、近代日本に生まれては世間を騒がせたカルト本やあやしげな思想家たち、伝奇小説でも大人気の珍説を「偽史」という観点から切り取った本です。
出るわ出るわ、皆さん一度はどこかで目にしたことのあるような怪しげなネタが山盛りです。罪のないおとぎ話だと思っていた義経=ジンギスカン説は大正時代に出版された本が火付け役になった、ごく最近になって定着した伝説だったなんて知ってましたか。他にも日本人起源説や日ユ同祖論にユダヤ陰謀論に神代文字に竹内文書など、大正~昭和初期にかけてぞろぞろ登場した新説が目白押しです。
これは明らかに思い込みと願望と妄想の産物であるなという冷静な分析を笑って見ているうちは良かったんですけれども、それが時代の流れに追い風を受けて広まっていった背景を追ってゆくとだんだん笑えなくなっていくのがちょっと怖いです。著者の長山さんがあとがきで「本書を読んだら楽しみ、笑って欲しい」と書かれているとおり、予想外でとんでもないおもしろ歴史は笑って突っ込んで楽しむべきものだなぁという感想にいたりました。真顔で主張して国を動かそうとしちゃいけませんやね。
本書はあくまで近代までの日本を中心にごく一部のテーマをまとめてありますけれども、それ以外にも西郷隆盛が畝傍艦に乗って戻ってくる説やらもっと世界的に有名な陰謀説に触れた部分もあってこのテーマの根深さをのぞき見た感があります。個人的に面白く読んだのは、最近興味を持ち始めた特撮作品に見られる南方幻想や秘密結社趣味のくだりですね。やっぱり娯楽との相性は抜群にいいんですよ、こういう奇想天外な嘘歴史は。

偽史冒険世界―カルト本の百年 (ちくま文庫)

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