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久生十蘭『十蘭ラスト傑作選』(河出書房文庫) [国内小説]

久生十蘭の文庫版傑作選、これが最終刊とのことです。豪華な全集のみならず、こんなに入手しやすい形でも十蘭の作品が読める幸せを噛みしめています。
ちょっと目次を見ただけでもピンと来るくらい、今回の収録作品は戦争ものが多いです。笑えるルポルタージュ風もあれば目を覆いたくなる悲惨な実録ものもあって傾向はさまざま。海軍報道班員として南方へ派遣された経験を反映した「風流旅情記」はタイトル通りののどかな笑いが阿鼻叫喚の南方戦線と交錯する傑作で、雑誌掲載が1949年という事実と並べてあれこれ想像すると面白いものがあります。その後1952年に発表された「雪原敗走記」はナポレオン軍のロシアからの地獄のような撤退をテーマにしており、この辺りの作品は執筆された時期を考えるのもまた一興…ではありますが、特に考えないで笑ったり震えたりする方が健全な読み方のような気もします。
1939年に書かれた前ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の手紙、という設定の「カイゼルの白書」は、これだけ読んでいると向こうの芦原将軍みたいな楽しいおじいちゃんのお喋りですが、背景を考えると途端に笑えなくなる鋭い一品です。短いうちにもこういう油断のならない鋭さが隠れているから十蘭は大好きなんですよ。

十蘭ラスト傑作選 (河出文庫)

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